地中海を舞台にした物語のヒロイン達:その③クレオパトラ

Updated: Sep 10

セイレーンのパルテノペ壇上の華ジュディッタ・・と、オペラのヒロイン達をハイライトしてまいりました「地中海ヒロイン・シリーズ」のラストを飾るのは、クレオパトラです。


地中海の港町アレキサンドリアは、ハイブリッド

ヘンデルが作曲した歌劇「エジプトのジューリオ・チェーザレ」は、地中海に面した港町を舞台に繰り広げられる、恋愛・戦・政治ドラマです。


アレキサンドリアはエジプトの都市ではありますが-----------ギリシアからやってきた風雲児アレキサンダーを由来として名付けられた都市名からもうかがえるように、エジプト文化とギリシア文化のハイブリッド仕様でした。


紀元前一世紀後半のエジプトは、二重の意味で過去の大国であった。三千年の歴史を誇るエジプト文明と、アレクサンダー大王以来三百年の栄光に輝いたギリシア文明と。クレオパトラという名も、マケドニア王家の女子にはよく見られる名であったのだから。(出典:塩野七生『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後』新潮文庫)

多くの人が持つクレオパトラのステレオタイプとしては、30代のクレオパトラがアントニウスと繰り広げたロマンスと鮮烈な最期のイメージが強いかもしれません。ヘンデルのオペラで描かれるのは、20代に突入したばかりのクレオパトラ。


アントニウスの心を射止めるためにはアフロディーテの装束で登場したクレオパトラも、シーザーに対しては、ローマの質実剛健さに寄せてシンプルに接したのだろうか。それとも、プトレマイオス朝の奢侈な暮らしぶりが、自然とにじみ出るような絢爛な装いであったか。


さまざまなモチーフを巧みに使いわけたクレオパトラが、シーンによりどのように変化してあらわれたのか、想像すると楽しいですね!


神と人間の狭間の存在として、天にすがるアリア


戦のさなか海に身を投じて行方が知れなくなったシーザーの安否を思い、クレオパトラが天にすがるアリアが「神よ私にお慈悲をかけてくださらぬのなら」です。


アリアの導入では「何ということ?おお神よ!」というセリフが、クレオパトラの口をついて出てきます。


As a warrior, Bellona's appearance but the heart of Mars. (Aria texts, English translation by unknown)

そしてクレオパトラは自らをこのように表します「戦の女神ベローナの外見だけれども、心は軍神マルスよ(和訳:百合子パフォーミング・アーツ)」と。


戦の女神ベローナは、長身の美人として知られ、涼やかな印象をうけます。「クールに見せかけて、内心は火星のごとく猛ってるの」--------そんなクレオパトラを表現したい。


ローマ式にはマルスと表記されるアレスは、ギリシャ神話ではオリンポス12神。愛ゆえに確信を以て境界をこえる姿が、暴走とみなされます。「シーザーが海に落ちて帰らない」との悲報をクレオパトラが受けとったとき、空には火星がひときわ瞬いていたのだろうか。


エジプトの民を統治する際には、黒髪のエキゾチックなカツラをしてイシス神として君臨するクレオパトラも、自分の手でどうにもならない運命に翻弄される時、人間味が出るのだと思う。クレオパトラが心を重ねたオリンポス12神も、決して万能な存在ではなく、たくさんのドラマを繰り広げた。そのドラマの結果が星座となり、夜空に散りばめられている。


(記事公開日:2021年2月20日、無断転載不可)


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